有明先生と瑞穂さん
ポロッ


ガシャッ

バサバサッ

チャリチャリチャリーン・・・


「・・・・・・・・・」




先生の喫煙場。

そこで煙草を吸っていた口之津は有馬の姿を見て、目も口も大きく開けて固まった。


その時に口から煙草を落とすと、なぜか手に持っていた荷物だけでなくポケットに入っていた携帯や財布、そして財布の中身の小銭まで全部落ちた。

どういう仕組みでそうなったのかはわからないがよっぽど驚いたことはよく伝わった。

瑞穂達はその様子を一歩下がった場所から見守る。


有馬は口之津の反応に満足気に笑った。



「どう?これでよくわかったでしょ」



口之津は固まったまま動かない。
思考停止状態だ。


「あんたがどれだけ勝手な思い込みと妄想で周りに迷惑かけてきたのか、しっかり反省することね」


肩の髪を後ろにはらいながら有馬は踏ん反りがえる。



口之津はようやくパクパクと口を動かした。


(何を言うんだろう・・・)



驚いたことは伝わるのだが、あれだけ焦がれていた人が、あれだけいがみ合っていた有馬であることが証明されたのだ。


(口之津先生の気持ちは・・・どっちなんだろう)


もしかしたら本人も、今はただ驚きばかりが頭の中を占めているのかもしれない。
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