有明先生と瑞穂さん
しばらく待つが口之津がいつまでたっても何も言わない。

それが不愉快だったのか、しびれを切らした有馬は眉間にしわを寄せて

「もう行こう」

と瑞穂達の方を振り向いて歩きだした。



「――っ!!ま、待て!!」



口之津がようやく呼び止める。

有馬は振り向くことなく足だけとめた。



「ウチが・・・」


口を開いたのは、有馬だ。


「アンタが探してたのがウチだってわかって残念だったでしょ?
でもこれがウチなの。
アンタを騙したつもりもないし、これからどうしようと――」

「なんで!!!!」


有馬を遮って声を張り上げるので、有馬は驚いて振り向いた。


口之津の表情は、

今にも泣きだしそうだった――。



「・・・え?」



「なんで、黙ってたんだ・・・」



「な、なんでって・・・」



そんなことを聞かれるとは思わなかったのだろう。
有馬は力が抜けたように笑う。



「あの時お前は言ったよな。
顔を見せないのは俺に会いたくないからだって・・・

俺に会うのが嫌だから

だからずっと黙ってたのか・・・?」


「・・・・・・!!」




口之津の表情を見て瑞穂は確信する。
きっと皆も同じだろう。
有馬も、わかったはずだ。





相手が有馬だと知っても、口之津の気持ちは変わっていない。
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