有明先生と瑞穂さん
コンコン


「失礼します」



有明先生を先頭に校長室に入る。


『どうにでもなれ』状態の口之津や身なりで何度も呼び出されたことのある有馬は面倒くさそうに校長室に入るが、こういうことに慣れていない3人はビクビクしながらお互いの背中に隠れて入室した。


校長室の中にはすでに、研修生担当の愛野先生が心配そうな顔をして立っている。

厳格な校長が手を口の前で組んで簡潔に聞いた。



「昨日生徒達の前で揉め事を起こしたという話は聞きました。
噂では暴力沙汰まで起こしたという話も出ている。

・・・これは生徒達の前で言う話ではないが、口之津先生は普段の行動も目に余るところがある。

何があったのか、きちんと話して頂きたい」


「・・・・・・」



話す気がないのか口之津は眉をしかめてうつむいたままだ。

その態度が瑞穂の不安を余計に掻き立てた。


(どうしよう・・・・・・)



正直に説明しても、これはこれで問題だ。

研修生とはいえ、教師と生徒の男女問題。

これこそ騒動どころの問題ではない。


瑞穂は緊張したままでグルグルと頭の中をめぐらせていると、有明が静かに口を開いた。


「・・・僕がこの場に居合わせたのですが、暴力沙汰にはなっていません。きっと、噂に尾ひれがついたものだと思われます」

「・・・そうなのかね?」


口之津が何も反応しない後ろで瑞穂達は必死に頷き肯定した。


そんな口之津の態度が気に入らないのか、校長は深いため息をひとつつく。


(何か言ってよ口之津先生・・・!)
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