有明先生と瑞穂さん
「僕が説明します」


有明もこのままではいけないと思ったのか険しい顔をしたまま一歩踏み出した。


「私は口之津先生の口からお聞きしたいんです。
本人から説明できないのであれば意味がない」

「・・・・・・」


校長の言うことはもっともだ。


これでは駄目だ――


有明も諦めたのか、ぐっと目を閉じる。


その時ようやく口之津が声を出した。


「自分が騒ぎを引き起こしたのは事実です。
憶測で――・・・生徒を傷つけるようなことを言いました」


(先生っ・・・)


「傷つけるようなこと?」



正直に話してしまうつもりだろうか・・・・・・


「なぜそのようなことになったのかね?
暴力沙汰はなかったと言ったが・・・倒れて保健室に運ばれた生徒がいたことは事実なんだろう?
それにそこの生徒・・・有馬君。
君は今は化粧はしていないがいつも身なりのことで呼び出されていた問題児だ。
二人が言い争いをよくしていたことは他の先生方からも聞いている。
そもそもの喧嘩の発端と事実を嘘偽りなく話してくれるかね?」


まくしたてるように問う校長に、室内の空気がピリリと皮膚を刺す。




「俺はコイツ・・・いや、有馬さんを・・・・・・」

「わ、私ですっ!!
倒れた生徒は私なんです!!
ただ緊張して、過呼吸起こしちゃって、それだけなんです!」


思わず瑞穂は口之津をかばって声を張り上げた。

校長もまさか瑞穂が何か言うとは思わなかったのか少し驚いたような顔をしている。


「そうなのかね、口之津先生」


「いや・・・晴が・・・

瑞穂さんが倒れたのも俺が原因です」


「先生・・・!」



その目は明らかに自暴自棄になっていた。


――全て話すつもりだ。
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