有明先生と瑞穂さん
「口之津先生」


昼休み、中庭の茂みで瑞穂はしゃがみこんだ口之津と会った。


「ここ煙草駄目ですって~。
昨日の今日くらい慎重に・・・」

「吸ってねーよ。ちょっと休憩してるだけ」

「ここ好きなんですか?」

「まーな」


瑞穂はちょこんと口之津の隣に座りこむ。





「・・・お前には、悪いことしたな」

「いえ、もう気にしてませんから。
というか私こそ殴っちゃってすみませんでした」

「ははっ、よく考えたら暴力沙汰ってアレか!
暴力起こしたの晴じゃねーか」

「うぐっ・・・。言われてみれば」


校長室では自分が殴ったことは綺麗さっぱり忘れていた。



「アレでいろいろ気付いたよ。
自分じゃわからなかった、自分の欠点とかさ」

「そんな・・・やめてくださいよ」

「いや本当だ。
あと俺はお前に嫌われるのは結構キツいらしい。
唯一俺を認めてくれた人間だからな」

「えー大げさですって・・・惚れないでくださいね」

「惚れねーよ」


カッカッカと声を出して笑う。
殴られた直後の口之津の表情の意味がわかった気がした。







「・・・まだ、有馬さんのこと好きですか?」


口之津はキョトンとした顔をして瑞穂を見た。


「・・・アイツが言ってたこと、正しいと思うか?」

『言ってたこと』とは、口之津の有馬に対する気持ちが自分の中の想像で作られたものにすぎないということだ。

瑞穂は遠慮がちに頷く。

それを口之津は笑って答えた。



「俺もわかんね。
もしかしたらそうなのかもしんねー。
でも、やっぱり好きだって思うんだよなあ。
自分でもおかしいと思うんだけどな。
ただの熱ならいつか冷めるんだろうか」

「先生・・・」


遠くを見つめたその横顔が少しだけ切なげだ。
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