有明先生と瑞穂さん
「おい・・・」

「ちょっ、うるさい。間違う」

「何やってんだ?」


ひょいとカウンターに乗り出し手元を見ると、どうやら数学を解いているようだった。

自分で採点までしなければいけないらしく、隣には解説付きの答案が置いてある。

女はそれを見ながらほぼ丸写し状態で進めていた。


「おいおい、それじゃ勉強になんねーだろ。
そもそも理解してんのか?」

「いいのよ、宿題さえ終われば」

「夏休み終わったらテストあるんじゃねーか?」

「・・・・・・」


図星らしくピタリと手が止まる。


「・・・そこ、解説省いてあるけど公式入るぞ」

「・・・アンタ、勉強できるの?」


ぱっと上げたその顔が、かわいい。


今思えばこの時すでに恋に落ちていたのかもしれない。


「じゃあさ、勉強教えてよ」

「はあ~?じゃあ教えたら俺とデートでもしてくれんの?」

「今暇なんでしょ?丁度いいじゃない」


俺の意見は無視らしい。


「書き取りもあるのよね。
一人じゃ終わらないと思ってたのよ~」


初対面の人間でも使えるものは使う。

なんて女だ。


それでも頼られたことが嬉しくて、認められたような気がして


俺は毎日通い続けてしまった。


お陰で見事に昼夜逆転だ。

どうしてくれる。
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