有明先生と瑞穂さん
「手が痛ぇ・・・」

「英語もわかんない。
ちょっとこれも教えてよ」

「あとどれだけあるんだよ」


他にも店員はいるようだがこの時間帯はレジ番をしてさえいれば文句ないらしく奥から出てこない。

俺としては変な邪魔が入らないからいいのだが。


「ねえなんでこんなに勉強できるの?
教えるのうまいよね。
学校の先生になれば?」

「あー?俺教師になるよ。
今度実習にいくし。
どこの高校だ?
俺が行くとこだったりして」

「浜真だけど」

「マジか!本当に同じだったな!」


少し運命的なものを感じてしまいひとりで浮かれていた。

そんな俺の気持ちを地面に叩きつけたのもこの女だった。



「うちの高校、超ーかっこいい先生いるんだぁ~。
すごく優しくてね、笑った顔がかわいいの!」

「・・・・・・」


ただ「かっこいい先生」の話をしただけなのに不快に思う自分がいる。

まだ会って数日だというのにこの独占欲はなんだ。

いや、そもそもコイツにはもしかしたら、もう彼氏がいるかもしれないじゃないか・・・


「な、なあ・・・」

「んー?」

「お前って・・・彼氏とかいんのか?」

「いるわけないよぉー」


軽く笑って言うそれに一瞬ほっとした。
しかし叩き落されるのはここからだった。


「ウチは有明先生一筋だもん。
先生だけど、マジなんだから!
他に男なんて作るわけないじゃん」


「・・・・・・!」



会って、たった数日。

なのに、こんなにも好きになっていたなんて――。


嫌でも自覚させられた。


うっとりと遠くを見るその先には『有明先生』とやらがいるのか。


その目を俺に向けてくれればいいのに・・・
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