有明先生と瑞穂さん
「俺・・・・・・」

「ん?」

「いや、なんでもない・・・」



告白しようとした自分がいた。


慌てて口を閉じる。

だめだ、まだ早い。


会って一週間。
「好きになりました」なんて言って誰が信じる?

軽い気持ちで近づいたけど、気付けばこんなにも熱くなっていた。

そんな簡単に伝えられる気持ちじゃない。


まだ早いんだ――・・・。





朝方いつも寝ている時間。

俺は寝付けずに悶々と考えていた。


まだ早い。
だけど・・・この気持ちを伝えずにはいられない。
でも、あの女が好きなのは――・・・


いいさ、それでもいい。


俺の気持ちは嘘じゃないんだ。

伝え続ければいつか本気だと気付いてくれる。



今夜は伝えるんだ。


俺がどれだけ救われたかを。

俺がどれだけ癒されたかを。





しかし次の日もその次の日も、毎日いた女はそのコンビニにはいなかった。



(宿題は、全部終わったのかな・・・・・・)



ぽっかりと胸に空いた穴。

虚しさだけが残る。

こんなにも大きな存在になっていたなんて――。



店員に聞くと元々短期で雇っていただけで、学校がはじまるから生活を戻すためにやめたのだと。



酷く後悔する。


伝えておけばよかった。


一瞬でもの躊躇がこんなに後悔することになるなんて、思わなかった。




***
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