有明先生と瑞穂さん
布津の切なげな顔は瑞穂の不安を掻きたてた。


そして目を瞑りたくなった。


弱いところを見たくなかった。




人には誰でも弱い気持ちが確実にある。

でもそれを布津に見たくなかった。




布津の唇を受け入れたあの時感じた気持ち。


キスは、嫌ではなかった。
正直嬉しかった―――だけど・・・




それは確実に自分の気持ちを明確にさせた。





「私の中で布津は『布津』なんだ。
だから『恋人』になってしまうのが怖かった。

でも、離れていくのも怖かった」



自分勝手に振り回してごめんなさい。


貴方が貴方じゃなくなるのが怖かった。


私が作り出した勝手な『布津』じゃなくなるのが怖いだなんて、そんなのは恋でもなんでもない。




「好き・・・・・・だけどごめんね」




もし有明先生が現れなかったとして

布津の気持ちにずっと気付くこともなかったとして


それでもこの気持ちはいつか布津を、二人を壊してしまう。



そっちの方がもっと嫌。



ずっと私の前を歩く貴方が見たい。

その後ろを歩いて私も成長したい。





共に隣を歩くことはできないけれど。






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