有明先生と瑞穂さん
***



がむしゃらに走ってまた図書室に戻ってきた。

ドアに手をかける前に息を整える。
それでも落ち着かないうちに一歩踏み出して図書室に入った。


ここからじゃ姿は見えないのに確信している――始まりのあの場所にいると。


窓の外を見る彼の顔を早く見たいと思う。


「有明先生・・・」


一歩ずつ踏み出す。
間違いなく、私が選んだ道。


なるべくゆっくりと息を吸って、吐いて――呼吸を整える。


「布津と話を・・・してきました」


ああ、声が震える。


「先生・・・」


――こっちを向いて。


まるで心を見透かされたようなタイミングで振り向くとようやく目が合う。


――と同時にまた涙が溢れた。


布津に対する申し訳なさと、不安。


勝手な涙はこんな時にでも自分勝手に流れる。



「・・・・・・好きです」




ようやく言えたこの言葉。
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