有明先生と瑞穂さん
「それでもあんな紛らわしい言い方するくらいならいっそ先に言ってくれた方がいいよ」

「だって・・・一度そうするって決めちゃったらどうしても変えたくなくて」

「変なとこで頑固だね」


先生が笑うと振動が伝う。


「でっ・・・でも、私の中じゃアレが遠まわしにした告白のつもりだったんですけど・・・」

「え」


言った瞬間、有明の顔が訝しげな表情になり固まる。



「・・・・・・・・・どこらへんが?」



考えてもどうしてもわからなかったらしく目線をさまよわせながら聞いた。



「だから・・・『布津のところに行ってきます』って・・・

あの、行って帰ってくるって意味だったんですけど・・・

だから先生は待ってくれてたのかと・・・」



(先に帰ってなくてよかった・・・)


呆れた顔で瑞穂を見ると、それでも何がまずかったのかわからないという顔をして笑っていた。





「・・・変な子」



「ええっ?!」



「瑞穂さん、変な子」



くくっと喉から笑いがこみ上げる。

当の本人は納得いかないようで少し不満げだ。



(え~~~、有明先生に変って言われた・・・!)



自分はいたって普通だなんて、思ってるのは本人ばかりだ。



「瑞穂さん」

「はい?」





「・・・!」
(不意をつかれたっ)



一瞬だけ優しく触れた唇。



また目が合ったとき、瑞穂にだけ見せる笑顔で優しく笑った。
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