有明先生と瑞穂さん
深江の顔を精一杯睨みつける。

今日初めて深江の顔をきちんと見たことに気付いた。


体中に力が入って、歯がギリギリときしむ。


――俺は何を怒っているんだろう。
誰に怒っているんだろう。


振られただけなのに、怒るってオカシイだろ?


自己中なイライラを理不尽に深江にぶつけてるだけだ。




なあ瑞穂、俺はこんなにも真っ黒だよ。

ヒーローなんかじゃないんだ。
かっこよくもなければ、そんなに綺麗なやつじゃないんだ――・・・。






「だって・・・駄目なんだもぉん・・・」


深江の大きな目にジワジワと涙が溢れる。


ああ、女を泣かせてしまった・・・。最低だ。



「晴ちゃんには布津君じゃなきゃ駄目なんだもん・・・!」




俺だってそう思ってるさ。

馬鹿みたいだよな。


だけど――




「そんなの、俺が決めることじゃない」


それでも深江は涙をぬぐいながら頭を振った。


「怒鳴ってごめん・・・でも俺ほんとに今余裕ないんだ。
だから・・・」

「違うの」
< 894 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop