有明先生と瑞穂さん
「有明先生、探していました。
どちらにいらっしゃったんですか?」

職員室に戻るとまだ帰宅していなかった小浜がすぐに有明の元に駆け寄った。

「ああ、ちょっと図書室に用があって。
どうされましたか小浜先生」

飲み会の件以来、全く問題のなかった小浜に有明はそんなことがあったことすら忘れかけていた。


「ええっとその・・・大学に提出するレポートなんですけどアドバイス頂きたくて・・・」

「ハハ、そういうのありましたね。
いいですよ。提出期限に合わせて僕も時間作りますから」

「本当ですか!嬉しいです」


小浜は頬を染めて笑った。





***



日曜日――


いそいそと着替えをする瑞穂に母親がニヤニヤしながら声をかけた。


「彼氏と出かけるの?」

「・・・お父さんに彼氏できたとか言わないでよ」

「なぁ~んで~?」

「倒れるから」


母親は大声で笑う。


「ねえねえ、紹介してくれないの?」

「まだ付き合い始めたばっかりだし・・・」


それに学校の先生と付き合ってるなんて言えない。


「どんな人?紹介できないような人なの~?
変な男に騙されんじゃないわよ」

「そんな人じゃないよ~ぉ」

「じゃあ紹介してよー」

「・・・・・・」


親とこういう話題は苦手だ。
しかし母親は楽しそうに笑う。


「何で彼氏出来たってすぐ気付いたの?」

「自分の子供の些細な変化くらいわかるわよー」

「そんな変わったぁ?!」

「まずこんな遊び歩く子じゃないしー、何より色気というかシャレっ気が出てきたというか。
そんなことより話そらさないでよー。
紹介しないの~?」


「・・・・・・」


また瑞穂は言葉を詰まらせた。



「高校・・・」

「え?」


「高校卒業しても付き合ってたら・・・紹介するかな」



「何それ?」



首をかしげる母親の横をすり抜けて「いってきまーす!」と逃げるように家を飛び出した。
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