有明先生と瑞穂さん
「こ、こんばんは・・・!」

「こんばんは」

「お、お邪魔しますっ」

「あはは、そんなかしこまらなくていいよ」


ガチガチに緊張した瑞穂。
有明も、少しだけ緊張してる。


「あっ・・・ごめんなさい。仕事中でした?」

「大丈夫。急がないから」


床に散らばったプリントや教科書を片付けると瑞穂がパソコンを覗き込んだ。


「いいな、うちもパソコン欲しい。
ノートパソコンってなんかカッコイイですよね」

「そう?ネット繋がってるから遊んでいいよ」


瑞穂は軽く首を振って、開かれたままの画面をじっと見つめた。



「何か飲む?」

「あ!えっと・・・お菓子持ってきたんですけど・・・」

「じゃあお茶出すね」


ぎこちないままだけど、やっぱり一緒にいると嬉しい。


有明が冷蔵庫に向かう背後で瑞穂がわざとらしく「ゴホン!ゴホン!」とセキをした。



「あ、ごめん瑞穂さん。お茶切れてるみた・・・」

「ストップ!!」

「え?」


あまりの大声に振向くと「わっわっ!」と言いながら慌てふためく瑞穂。


「ま、前向いててください!」

「え?う、うん・・・」


有明はわけがわからないまま言われたとおり、もう用のない冷蔵庫の方を向いて立ち尽くした。


(なんだろう・・・・・・)


背後では「あ~」「んぅ~・・・」と小さなうねり声が聞こえる。


(俺、何か魔術でもかけられてる・・・?)
< 946 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop