有明先生と瑞穂さん
「・・・どっちも同じだろ」


口之津はそう言って乱暴にチークを棚に戻した。


「だからわかんないって言ったじゃない」

「わかんねーけど・・・」





「こんなん見て喜んでる祥子の方が――・・・・・・」


「え・・・・・・」



クッサイセリフを言いかけて、自覚したのか真っ赤になる口之津。

そんなに赤面されるとこっちまで恥ずかしいわ!


「イヤ・・・じゃなくて・・・有馬・・・」


「・・・・・・どっちでもいいわよ」



そう言うと「え?!」と言いながら嬉しそうに顔を上げた。

――別に深い意味なんかじゃない。


「そもそもアンタにそういうセリフは似合わないわ」


そうよ。
無理するからボロが出るのよ。


「有明先生ならもっと自然とかっこよく言っちゃうに決まってるんだから」

「・・・・・・!」



アンタは私の理想とはかけ離れすぎなのよ。


アンタは有明先生にはなれない。




――だからもっともっと傷ついた顔すればいいわ。
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