有明先生と瑞穂さん
やけくそ気味の有馬は網の肉をいくつか一気につかんで口に入れる。

「それまだ赤いぞ!」

「牛肉はこれくらいが一番おいしいのよ!」

「そうなのか。すごいな、料理できんのか!」

「こんなん料理のうちに入るか!」


次々に皿をたいらげ追加注文する有馬に口之津は最初こそ呆気に取られていたがすぐに嬉しそうに笑った。


「何笑ってんのよ」

「だってうまそうに食うからよ」

「おいしいわよ!悪い?!」

「いや悪くない。お前のそういうとこ好きだ」

「・・・!」

「ははっ!今日だけでもお前のこともっと好きになったわ」

「・・・・・・ッ」


調子が狂う。
それに全然気付かずにニコニコ無邪気に笑いながら「好きだ好きだ」と連発する。


「もっとムードとか考えろ馬鹿!!!」

「うおっ?!」


何の構えもなしにそういうことを言ったりするのは卑怯だ。

真剣に答えられない――



(って何よ・・・。
ウチは真剣に・・・なんて答えるつもりなのよ)


有明先生なら焼肉屋なんて――






「それで・・・話って何なのよ。いい加減話しなさいよ」

「おお、そうだった」



学校で見せるような険しい顔はどこにもない。

あの顔が嫌いだった。

今はまるで、夏休み中いつも見せてたあの笑顔。
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