有明先生と瑞穂さん
階段を下りた先にある扉は黒く、いかにもといったゴシック調デザインのロゴが出迎える。

中に入るとサングラスをしたいかつい男性が一人「いらっしゃい」と声を掛けた。

地下にあるため窓のない狭い店内は少し息苦しいが、そんな気分はところ狭しとガラスケースに並べられたシルバーアクセに目を奪われてどこかへ飛んでしまう。


「わぁー、いろいろある!」

「でもここあんまり女モンはないかもな」

「平気、平気!」


値段もピンキリだ。
化粧品を買えなかった分があるからここで使おう、と財布の中の金額を思い出しながらいくつか目星をつける。


「おっ、コレなんかどうだ?」

「見せて見せて!」


口之津が言う手元を覗き込むとそこにあったのは――・・・・


「・・・・・・何でソレ?」


ここの店には似つかわしくない、むしろ『よく見つけたな』と言いたくなるようなかわいらしいハートと天使の羽のデザイン。



「似合うんじゃね?」

「そーいうのはここじゃなくても売ってるでしょーが!
ウチはもっとかっこいいのが欲しいの!
選ぶならもっとカッコイイの選らんでよ」

「つってもなあ・・・俺、女がそういうのつけてんのあんまりイメージできねえ」

「ほんッとにアンタはそういうとこズレてるわよね!」


二人のやりとりに店のサングラス男が声を出して笑った。



有馬は適当に見回してひとつのネックレスを手に取るとそれを目の前で首に掛け腰に手を当てて口之津に見せた。


「ホラ!こんな感じよ!どう?」

「おおー、なるほど・・・」


口之津は納得したように有馬の胸元と全身をマジマジと見つめる。


(ううっ・・・またこの男は・・・)


つい勢いで『見ろ!』とやってしまうのは自分なのだが、この男は自覚しているのかいないのか・・・。
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