有明先生と瑞穂さん
全く気にしていないのか、口之津はベンチにドカッと座った。


「何でここなのよ」

「いや特に意味は・・・近かったから?」

「・・・あっそ」


隣に座ると、口之津はさっき買ったネックレスの包装された箱を乱暴に開けた。



「んー、やっぱいいなコレ。
薔薇ついてるけど男がつけても変じゃないよな?」

「大丈夫じゃない?どっちかっていうと男向けってカンジ」


有馬の答えに満足そうに笑う。




「祥子、つけさせて」

「え・・・」


口之津はネックレスの留め具を外すと、いつもとは違う、大人っぽい顔をして微笑んだ。

初めて見るその表情に有馬の心臓が跳ねる。






「い、いやよ。恥ずかしい。
自分でつける」

「いいじゃねーか。ケチ!」

「ケチって・・・やっぱアンタガキだわ」

「いいよ何でも!いいからつけさせろ!」

「わ、わかったわよ!わかったから大きい声出さないで!」


口之津よりも更に声を張り上げた有馬に、通りすがりのランニングをしているおじさんが振向く。


てめーの方が声でけーよ、と言いかけた口之津だったが言ったところで無駄な言い合いになることはわかっているので口を閉じた。




「・・・・・・早く」

「んっ・・・お、おう」


頬を染めてうつむく有馬に口之津もドキリとする。



――見た目は俺の嫌いなギャルなのにときめくなんて、我ながら不思議だ。



口之津は薔薇のネックレスを持った手を有馬の首にまわした。




「・・・普通こういう時は後ろからつけるのよ」

「マジか」


うつむく有馬のおでこに息が掛かる。


胸元に鈍く光る薔薇が乗った。



「・・・・・・」



ネックレスが掛けられた後も、有馬には口之津の影が落とされたまま。




「・・・・・・・・・わり・・・」

「え・・・・・・」







「――っ!」





まわされた腕は戻らぬまま、


突然きつくその体を抱きしめた。
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