有明先生と瑞穂さん
「なに・・・」

「残酷な女。
お前が『有明先生なら』って言うたびに、思うたびに、俺がどういう気持ちになるかわかんねえ?」


――わからないはずは、ない。


だってそれは全て




意図的なものなんだ。




・・・どうしてそんなことを?






「有明がしそうな扱いを俺に求めて今日はついてきたのか?」


――そんなわけない。


「俺がこんな性格だって知ってるよな?
あの男と俺は正反対だって、わかってるよな?」


――そうよ、比べること自体がおこがましいのよ。


「じゃあなんで」


――じゃあなんで?





なんでウチはこんなにちぐはぐな行動ばっかり取ってるんだろう。




「・・・今日はもう帰る。
無理矢理キスしたのは悪かった。

これはただの負け惜しみだけどよ、お前の言う『有明先生』ってのも全部お前の想像だからな。
実際本当に有明が取る行動なんて、有明しかわかんねーよ」



カッコ悪い言葉を吐き捨てて有馬を残して歩いて行く。


だんだん遠ざかるその姿から目が離せず、立ち尽くしていた。


口之津がカップルの前を通り過ぎると物珍しそうに目で追った。




「・・・待ちなさいよ」



小さな声で呟く。
ギリリと歯をかみ締める。



腹が立つ。

腹が立つのよ。
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