有明先生と瑞穂さん
少しくらい意識させておいた方がいいのかもしれない。


そう考えた有明は唐突に瑞穂の腕を掴み体を反転させて床に組伏した。


瑞穂は一瞬驚いたがすぐにはっと気付き、ゆっくりと目を閉じる。


「・・・・・・」



――そうじゃない。
あながち間違ってないけどそうじゃないんだ・・・。


有明は深くため息をついてふてくされながら再び床に転がった。



(あ、あれ・・・?キスじゃなかったのかな)


平和な瑞穂は少し恥ずかしそうに頭を掻いた。


それでも懲りずに(というかそもそも理解していないのだが)有明の背中に抱きつくと、思いついたように有明が呟く。


「今度デートでもしようか」

「え・・・どうしたんですか?」

「んー、なんかさ」


もう一度体を反転させて瑞穂の方を向いた。


「二人はあんなに堂々としてるのに俺達ばっかりコソコソしてて、なんか悔しいなって」


今日はずいぶん子供っぽいことばかり言う。


「だめですよ・・・。バレたらどうするんですか」


流されてしまいそうになるが、内心必死で堪えて有明をなだめる。




「でも言われてみたらそうですよね。
あの二人も周りにバレちゃったら研修生とはいえ危ういですよねー・・・」

「口之津先生は隠すなんてこと自体頭にないみたいだし」

「あはは」



瑞穂の知らないところで口之津はよっぽど有明先生に迷惑をかけているらしい。



それでも楽しそうだと思うのは他人事だからか。
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