有明先生と瑞穂さん
***





「ええっ!!告白された?!」



「うん・・・」



瑞穂は深江の言葉に思わず声を上げて驚いた。

布津に小突かれて慌てて口を手で押さえる。



「誰に?!ウチらも知ってる人?」

有馬は楽しそうに目を輝かせた。


「結もよく知らないんだけど・・・バスケ部の・・・布津君の先輩」

「え」


布津も驚く。


「布津君と付き合ってるって思ってたみたいだけど、違うって知って告白してきたみたい」


深江の表情は晴れない。



「で、どうするの?」

有馬の問いに瑞穂が聞き返した。


「どうするって?
だって、話したこともないんでしょ?」

「・・・・・・」


瑞穂の言葉に深江は更に表情に影を落とし、戸惑いを見せた。


「わかんないじゃん。
好みだったら付き合ってみるのもアリでしょ」

「ええ~・・・」


瑞穂にはそれがどうしても理解できず、何気なく意見を求めて布津を見た。

そこでようやく気付く。


布津の様子も少しおかしい。
表情がどこかぎこちない・・・。




「まあ深江が決めることだし、な」


布津の言葉にピクリと深江の唇が動いた。




「あの、ね・・・、結ね・・・」


深江は言いづらそうに口を開いた。



「実は結、今まで告白されて断ったことないんだ・・・」


「えっ・・・」



深江の言葉にまた瑞穂は驚く。



「というか・・・断れないんだ」



「!」



そこで瑞穂はハッとした。


以前深江が話してくれた中学の頃までの幼馴染。


深江は同じことを繰り返したくなくて断れないのだ。


今は相手のことをよく知らない関係かもしれない。


しかしそこで断ってしまえば終わってしまう。

目の前から、相手が消えてしまう・・・

傷つけたままで消えてしまう――・・・



深江のずっと心の奥底に眠る後悔。


それが深江を断ち切れずにいた。
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