有明先生と瑞穂さん
「だから俺は別に深江を好きなわけじゃねーけど、正直ショックだったわ。
自惚れてたから告られても断ると思ってた。
まあ告られること自体考えたこともなかったけど」


「ぶっざまー♪」


有馬は口を押さえてイヒヒと笑う。





「でもね、ウチとしては深江なりに変化があったんだと思うよ」

「変化?」


さっきとは違い頬杖をついて微笑む有馬はどこか大人っぽい。
布津は密かに『スッピンだったらさぞ美しいだろうに』としみじみ考えていた。




「深江に何があったのかは知らないけど、布津と晴子を見て今のままじゃいけないって思ったんじゃないの?」


「どういうことだ?」


「少なくとも今は、返事に迷ってる。
ウチらに相談してきたってことは、自分だけの考えじゃどうしようもないってことでしょ。
断る勇気はないけど、このまま付き合うのもよくないって思ってる」


「あ・・・・・・」



「少なくとも今までどおりなら今日の報告は『告られました』じゃなくて『彼氏ができました』だったと思う」



「・・・・・・」




昼間、深江を責めるような態度をとってしまった自分を今更ながらに後悔した。




「まあそんな顔すんなって。
つか布津は顔に出すぎ」

「ウッ・・・そぉかあ?」

「アハハ!しょうがないなあ!
じゃあ今日は優しいウチが部活終わったらメシ奢ってあげるから!
たまにはウチら二人ってのも」

「布津テメーーーー!!」


「!!」
「うげっ!」



遠くから赤い頭がズダダダダッと下品な音をたてて走ってくる。

――口之津だ。



「テメー何勝手に人の女に手ェ出してんだ!!」

「はぁあ?!」


布津がただ驚いていると隣にいた有馬が見えない早さで移動する。



「うるさい黙れ!!」

ドスッ

「エグッ・・・」


気付いた時には有馬の拳は見事に口之津のみぞおちに直撃していた。


(怖ぇえーーー!!)



「次変なことデカイ声で言ったら殺す」


「もう死んでんじゃねーのかソレ!!!」
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