放課後図書室
早瀬君と喋っていると、私は何でこうも自分を取り繕えないんだろう。
いつもクラスの中でやっているように、当たり障りなく、面白みも無い、ただの存在感の薄い八方美人でいられないんだろう。
「泣くようなこと?」
一粒落ちてしまった私の涙を見て、早瀬君は呆れたような、でも優しいような、そんな声のかけ方をした。
私は俯きながら手で涙を拭う。
「楠原はさ、多分損してるよ」
「……」
え?って言おうとしたが声が出なかった。
「相手を知ろうとする努力もしてないし、自分を知ってもらおうとする努力もしてない」
「……」