剣舞
「覇王。いらっしゃいますか?
ご相談申し上げたい事がございます。」

「ああ。入れ。」

ディック=モンローが、私室に入ってくる。

「執務室ならともかく、私室に参るとは、珍しい。隠し事か?相談か?」
ヴァイスは、ディックを見据えて言った。

「貴公の仰せの通りですよ。私より、幾年もお若くいらっしゃるのに、何と鋭いことか。」

半ば、茶化すように、
相手はいう。

「冗談はいいから、早く続きをいってくれ。」

そう促すと、ディックは何ともいえない表情をして、話始めた。


「覇王。お尋ねいたしますが・・・アンジェラ姫が、最近神殿に篭りきりで、礼拝を行われている事は、ご存知ですか?」

「アンジェラが?」

初耳だ。
元来、彼女は信心深いほうではあるが、それほど信仰に傾倒していない。

「はい。彼女の側女に聞くところによると・・・」

「ディック。今度は、どの女と恋仲になったんだ・・・」

話を反らせるつもりはなかったが、あまりの交遊範囲の広さに、つい、小言をいってしまった。


 
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