剣舞
「恋仲とは、また大それた。親しくなっただけですよ。」

やつは、サラっと流して話を戻す。

親しく・・・なんて、考えているのは、いつもオマエだけじゃないか。
つい、言いかけるが、大人同士なんだからと、敢えて聞き流す。

「それより、アンジェラ様の事ですよ。覇王。」

いずれ、貴方の妃になる方ですよ。・・・口には出さないが、そう、いいたげだ。

当のヴァイス本人には、その気はないので、口にすることは、堅く禁止しているのだが。


何となく、不穏な予感が
彼の芯を貫いた。


ディックは、話を続ける。

「姫君のご様子が、かわった様です。貴公が、特別にご興味を示してさしあげる事がないからではございませんか?」

「それは、今に始まったことじゃないだろう。
私にとっては、彼女は従兄弟の域を出ないよ。」

アンジェラ本人にも、はっきりと伝えてある事だ。

従兄弟であり、友人である以外、恋仲や、ましてや結婚などは、考えもつかぬと。

彼女も了承していたのだ。

だから、ここに住まわす事を承諾している。

 
< 34 / 108 >

この作品をシェア

pagetop