剣舞
水宮殿より、岸壁へむかう。


切り立った岩肌

ここが、太古からある、
神殿への裏道だとは
王族・・・すなわち、
自分達しかしらない。


神殿は、宮殿の真下にある岩肌を利用した造りとなっている。


この神殿は、道の険しさまあって、日頃、宮中のモノさえ立ち入らない。


こんなところへ、
アンジェラが一人で
通えるんだろうか?


足元が冷たくなり、彼は、鍾乳洞に入った事を知った。

岩肌の要所には、もう、どのくらい使われていないのか、燭台が取り付けてあった。

しかし、そこにも灯はなく、また、最近使用したような痕跡もなかった。


「・・・まったく。こんな所へ、一人でこれるのかよ。」

寒さから、愚痴めいた言葉がこぼれた。


暫く進むと、暗闇の中に、灯を発見する。

その一点の明かりに向け、通路が開け、目前に神殿が見えた。

その手前には、古文書にも記される舞台がある。

そして、偶像の前に、
ひざまずくわけでも、
祈りを捧げるわけでもない、アンジェラが思慕深く佇んでいた。


 
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