剣舞
洞穴の半ばの台座の灯に視線を移す。


ここが灯台であることを知る。


「ここは、灯台よ。
砂漠は地形が変わるから、霧なんかでも自分の向かう方向がわかるように、こうやって火をともしている。」

自分の視線から彼女は、わかりきったことをいう。

沈黙を避けているのだろう。


彼女は、先程まで、自分の膝にかけていた毛布を彼の肩にかけてやり、不自然な会話を紡ぐ。


でも、それも直に限界が訪れて、二人の間には、沈黙が広がった。


唾液を飲む音さえ、自分の中に大きく響く。


気まずい静寂を破ったのは、男の方だった。


「オリビア・・・。

お前は、何故、そうやって私を拒む?

私の事を、よく知りもしないのに、何故?」


きっと、彼は、切ない瞳してるのだと思う。

目を合わせれば、きっと自分は、彼の魅力にひきつけられるだろう。

それが解っておりながら、その瞳を見ることなんて出来なかった。


今ならば

恋物語として
自分だけの思い出にできる。


オリビアは、無言のまま俯いていた。
 
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