剣舞
「もう、視界が開けてるだろうから、頂きにいくといいわ。
本当に、美しいわよ。」

頂へと促す。


短く答え歩みを進める背後に、オリビアが誰かと話す声が聞こえた。


朝の景色を奨めただけではないのかもしれない。


灯守の交替の時間が近づいていたのだろう。

共にいる事を知られない様に配慮したのかもしれない。

『長くいきてる』

そこにこめられた現実を、感じとれないほど、自分だって鈍感でも浮世離れしているわけじゃない。


「しかし・・・美しいな。」
零れた声を、赤岩が吸い込んでいく。

黄みを帯びた光線が、黄金の朝日にかわる。

「自然は美しいモノよ。」

再び、オリビアの声がする方に体をむける。


二人、並び立ち
朝焼けの中、身を置く。

朝日が大地から、急速に姿を見せ、砂丘の風紋の波状を浮き彫りにしていく。


眩しい輝きの中、ヴァイスが、彼女の肩を抱き寄せ、その額に口づけする。

突然の事に、瞳を見開くオリビアの目に、彼の髪から、数滴、朝露が雫となり光を帯落下するのが映っていった。

 
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