剣舞
呼び付けに応え、やがて華やかなドレスをまとったアンジェラが姿を現す。

「覇王。私になにか御用事と賜りましたが?」

鈴の様に澄んだ声が、かけられる。


「ああ。」

彼は、真っすぐに、従姉妹姫に視線を注ぐ。

「率直に聞く。」

言葉をきった男に、アンジェラは、小首を傾げてみせる。

「成人の儀に、禁舞を要望したと聞いている。他の演目と間違えたのではないか?」


「いいえ。私は、オリビアの剣舞を、見とうございます。」

ニッコリ笑う、その表情には、一欠けらの悪意もないようにみえる。

「何故、彼女にこだわる?」


「こだわっているのは、貴殿でございましょう?私は、唯、貴方が宮殿を抜け出してまで、ご覧になる舞手を拝見したいだけですわ。」

ヴァイスは、ただ黙って、言葉を聞いていた。


 
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