剣舞
「それほど、有能な舞姫が、剣舞を奉納できないような技量であるはずがないでしょう。単なる舞奉納です。」

ヴァイスは、立ち上がり、アンジェラの前に立ちはだかる。

穏やかな表情と裏腹に、理屈のわかるような、わからぬような事をいう妹分に対し、たぶんに怒りを秘めていた。

「アンジェラ。

何故、『剣舞』が、禁じ手に取り決められたか、知っているだろう？

二人の舞手のどちらかが死ぬまで、剣を交え続ける。
そんなものは、娯楽ではない。決闘だ。

法治国家で、通用すると思っているのか？！」

最後の方は剣幕となり、空気を威圧感で満たしてしまう。

だが、彼女は怯む事なく、己の考えを上申する。

「『禁舞』に、制定されたのは、剣舞の、その一面からで、単なるこじつけですわ。
神を祭る奉納行事として、古来から取り計らわれてきたものを、人間が勝手に禁ずるなど、ゆるされるべき事ではありませんわ。」

剣舞を奉納しない儀など、私は出席しませんからといって、アンジェラは執務室をあとにする。

アンジェラの侍女が、慌てて礼をとり、二人に礼をとり、後に続いた。
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