剣舞
怒りが頂点近くに達したヴァイスが、ディックに言葉を投げる。

「ディック、すまぬが、頼まれてくれないか?
ヴォルハムンへ行って、ジルと言う男に会ってきてくれないか。」

「オリビアでなく?」

「ああ。どちらにしろ、彼女は、そこにいる。
ジルというのは、そこの長だ。彼の意見を聞いてくれ。
書状は、私が書く。
頼めるか?」

「もちろん、ですよ。」

覇王の、計算の正確さと速さは、自分が一番よく解っている。

彼は、主の表情より緊急と心得、書簡をあずかり次第、宮殿を後にし、今に至るわけである。




「オリビア。『剣舞』は・・・しっているか?」
ジルが問う。

「ええ。」

話くらいは、何度か聞いたことがある。

「確かに、その姫君が仰せの通り、神楽として奉納されていた。
ある日を最後に、禁舞として、封印された・・・と。」

オリビアの瞳が陰る。

「オリビア嬢。
なにか、それに替わるような舞踊はございませんか?

私の様に、知識の浅い者が申し出るのは、恐縮いたしますが。」


 
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