剣舞
「残念ですが・・・
ディック=モンロー伯爵殿・・・
剣舞は、特異な舞踊で、それに替わる代物はございません。」

彼女は、俯いていた頭をあげ、言葉を続ける。


「覇王様に、お伝えください。
どうしても・・・と、言うことであれば、お受け致しましょう。

ただし、私の相手は、村の者にはさせません。

他の舞踊団からも、お受けしません。

覇王でも、姫君でも結構ですから、貴方がた、水宮王室の方がお相手ください。」

ジルとカレンの表情が安堵する。

これなら、断るしか互いにないだろうと、居合わせた全員が思ったのである。

「成人の儀の祝賀の日には、私も水宮楽師と共に、宮都へは参ります。
そのときに、私が剣舞を演じればよいか、参宮を遠慮さしあげればよいかの、ご指示をください。」
 
では、話は終わったからと、早々に引き上げるディックを、オアシス付近までオリビアが代表して見送る。

「ずいぶん、機転が利く方だ。」

ディックが、オリビアに視線をむける。

その色は、友好的には
感じられなかった。

 
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