剣舞
「経験上の判断よ。
それ以外に何もないわ。」

苦い気分でこたえる。

「ヴァイス様が・・・
こちらに貴方を尋ねた理由は、
ご存知でいらっしゃるかな。」

「・・・ええ。」

「貴方は、覇王に、どのような感情をお持ちですか?」

ずいぶん率直な質問だ。

「特に、何も。」

他人の彼に、語る言葉もない。

「道中、お気をつけて。
半月後に、お目にかかります。」

彼女は、会釈をして村に踵をかえした。


オリビアに背を向けて歩きながら、ディックは、この二人の実る事のない恋心を感じていた。


旅の踊り子と
一国の王・・・

どうあがいても、
結ばれはしない。


駆け落ちでも、しないことには無理だな。


そう思い、すぐに、覇王が、遣り兼ねない性格をしている事に気付き、胃に痛みを感じる。


救いは、オリビアの気性かな。

彼女なら、踏み止まってくれるだろう。

そう、気を取り直して
帰路を急いだ。



 
< 66 / 108 >

この作品をシェア

pagetop