剣舞
元来、機転の効く娘ではあるが、こういった駆け引きには、恐ろしく疎い。


そんな少女が、ある日突然、自分達が管をまくような物言いを出来るようになるのだろうか?


自分を越える策略をしかけられるように、なるんだろうか?


おそらく、今、アンジェラが、オリビアに抱く感情は、嫉妬であろう。


ただ


嫉妬というものは


そこまで、人間の得手不得手といった、持ち前の何かまで、何の徒労もなく変えてしまえるモノなんだろうか?


何か裏があると思う。


そんなアンジェラと剣を交えるのは、剣の心得の全くないオリビアには部が悪い話だ。

ならば、自分が相手なら
彼女に傷を追わせる事もないだろう。


そう考えて、剣舞の相手の剣士を引き受けたのだが。


それを告げたときの
オリビアの瞳は


思い出しても
身を裂かれるような
気分になる。


オリビアと

もう一度、話がしたかった。


選択の理由を告げたかった。


夜の埠頭に彼女を誘ったのは、それも理由の一つであった。

 
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