Dictator
come across



 ある秋の初め、俺は─────





 「かねがね言うとりますが、金がねぇー!!」


 「そうか」


 冷たい一言を浴びせられる。


 「そうか、ってあーた………」



 このいとつまらなき男は、慶秋伸一(ケイアキ・シンイチ)。


 俺の幼なじみであり、今はこの、"対凶悪犯罪警察"通称"ワルタイ"で俺とともに活躍する一人である。





 「てか活躍ってまだ二件しか事件解決してねぇー!!」


 「街が平和ってことだろ? いいことだ。


 と、言うか誰につっこんでるんだ?」


 「いや、別に……… つまり俺が言いたいのは完全歩合でこの暇さはツラい」


 そう、この仕事は完全歩合制。しかも命懸けなのに30万くらい。



 「もうちょっとくれても良いのにな。家賃がピンチでさ。


 慶秋、泊めてくんない?」


 「断る。金がほしいなら、仕事しろ」


 渡されるはペライチの紙。つまり、ペラペラで一枚という意味の、俺用語だ。



 「俺に行けってことね。じゃ、ワルタイの頭脳さんは留守を頼んだぜ」


そうして俺は颯爽と出掛けた。
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