Dictator
わたしの父は中学校教師だった。
そしてその父が教えていた生徒が麗さんと慶秋さんだった。
父は生徒からよく慕われたと聞くが、卒業後もこんなに長く関係を持っているのは二人だけだ。
なぜ二人がそうなのかは、わたしには分からないけど。
「よっ! 久しぶり、先生」
「おい、失礼だぞ、麗」
と、二人は初めてわたしの家にやってきた。
わたしが10歳の秋。ちょうど今から五年前。
この季節にしては珍しく、よく晴れていたのを覚えている。
「久しぶり。慶秋は大人になったな。美山は変わらないけどな」
言いながら、すごく嬉しそうなお父さん。
「ひっどいなぁ。意外とガラスのハートなんだから、気を付けてよね。
あれ?」
麗さんがお父さんの後ろに隠れたわたしに気づく。
「未恵ちゃん………だよね? よくお父さんから話聞いてるよ」