【短編】ヒーロー


重く長い沈黙に、何度もその場の重い空気を呑む。


どこかへ行っちゃうと思ってた颯ちゃんは、階段に座ったまま俯いてる。



颯ちゃん、どうしたんだろう。
何で
『もうええわ』
っていつもみたいに、どっか行かないんだろ。



そんな颯ちゃんを見てたら合う目。
慌てて逸らしたけど、颯ちゃんにはバレてた。



「なぁ、さっきの萌子の事
好きな奴……お前も好きなんか?」



さっきとは、違う優しい声。

その声に安心したのと、今の説明でわかった。



あっ!
さっきの嘘!?



「あ、それか。ううん。
好きって言うか、まだ会った事ないし……」

「はぁ?」



颯ちゃんの表情に、苦笑いをした。



「さっちゃんと、ようちゃんがね?
私を紹介して欲しいって言ってる子居るからって……
で、今から行くとこなんだけど」

「あぁ。それで化粧までしてん?」





< 28 / 77 >

この作品をシェア

pagetop