【短編】ヒーロー
「え? あ……これは……勝手に」
何だか急に化粧した自分が恥ずかしくなった。
「てか、全然似合ってへんし」
「あ……だっだよね?
落としてこよっかな」
あ。また笑っちゃった。
でも、笑ってないと泣いちゃいそうでさ?
似合ってないとか、ハッキリ言われると結構キツイなぁ。
一番近くのトイレに向かって、鏡で自分の顔を見た。
「あは。濃いな……」
似合ってない、か。
やっぱり、私が可愛いとか、友達だから言ってくれるんだよね。
颯ちゃんに気付かしてもらった事、感謝しなくちゃ……。
でも、溢れ出る涙。
颯ちゃんが居る場所から、トイレは近い。
もしかしたら、泣き声聞こえるかもしれない。
だから必死に声を押し殺して泣いた。
でも、颯ちゃんの事だから、もう居ないよね?
なのに、こんな努力するなんて、私やっぱり馬鹿だよね。