【短編】ヒーロー
――ドンッ
「あ、ごめんなさいっ」
必死すぎて、下りてきた人にぶつかって慌てて謝る。
「こっちこそ、すいません。
急いでて……あ、馬場さん?」
「へ?」
見上げると颯ちゃん位、背の高い男の子。
誰……だろう?
「ちょうど良かった!
今から馬場さんのところに行こうと思ってたんです。
今、大丈夫ですか?」
全然大丈夫じゃないんだけど……とは言えなくて、
『え……あ、はい?』
と笑顔で答えてしまった。
「俺、1年の柳って言います。
前から……その。
馬場さんのこと可愛いなって思ってて……
あ、彼氏っているんですか?」
え?
これって告白?
いや、好きも付き合ってもないから告白じゃないか?
「えっと……彼氏ですか?」
何故か敬語を使ってしまう。
だって……大きいから、ね?
『はい』
可愛い笑顔の柳君。
颯ちゃんは、彼氏じゃないもんね。