【短編】ヒーロー
その背中を見送り、柳君のいる玄関へと小走りで行った。
「馬場さん……彼氏いたんですね?」
寂しげに笑う柳君。
「え? 颯ちゃんは、彼氏じゃないよ」
「え? そうなんですか?
そっか、良かった。
俺てっきり……すみません」
赤くなったり、焦ったり……やっぱり謝ってる。
「で……どうしたの? 柳君?」
私の一言で、少し赤くなり俯いた。
どうしたんだろ?
何か言いたそうなんだけどな?
「あ、あの!
もし良かったら……付き合ってもらえませんか?」
「へ?」
「今日、友達って言ったばっかなんですけど……
その、やっぱちゃんと言っておこうかな……って思って」
真っ赤になって私を見る柳君の気持ちが伝わってくる。
凄く嬉しい。
でも……私。
ドアが閉まった部屋を見つめて、
「気持ちは凄く嬉しいんだけどね?
……その、ごめんなさい。
好きな人……いるから」
「あ、はい。わかりました。
すみません……突然」
最後まで謝って帰った柳君。
何だか哀しい気持ちになった。