【短編】ヒーロー
首を傾げながら言う私に、
何だか少し哀しそうな表情を見せる。
「お前……彼氏おらんって言ったやろ?」
「それ……いつ聞いてたの?」
テレビに目線を移した颯ちゃん。
彼氏居ないって言ったの……お昼休みだよね?
颯ちゃん聞いてたの?
あ!
さっきも颯ちゃんが彼氏じゃないって言ったっけ?
って。
「えっ? 私……彼氏いないよ?」
「は?」
「え?」
何故か驚く颯ちゃんに、私も驚いた。
「お前、俺のやろ?」
「えぇ?」
俺のって何?
俺の!?
頭の中でグルグル回る颯ちゃんの言葉。
『お前、俺のやろ? お前、俺のやろ? お前、俺のやろ?』