【短編】ヒーロー
「じゃあ、そう言う事や……わかったか?」
え?
私の唇に、柔らかくあたる……颯ちゃんの唇。
そしてそっと離れた。
「え? え? え?
颯ちゃんって……私の事、好きなの!?」
「ぶはっ! お前、キスする時くらい目閉じろやー」
何か流されたけど……
これだけは、流されちゃ駄目だよね?
私から笑いながら離れる颯ちゃんを、起き上がって片手で捕まえた。
『あ……萌子が積極的や』
なんて颯ちゃんの言葉を無視して、強く握った腕。
「ねぇ……颯ちゃん……そうなの?」
必死な私に、優しく微笑みながら、
『だから、そうやって言うてるやろ?』
また近づいた顔に、ゆっくり目を閉じた。
颯ちゃんが私を好き?
本当に?
また冗談なんかじゃないよね?
いっぱい考えてたのに、そんな考えを消されるキス。
さっきみたいな触れるだけのキスとは違って……。