【短編】ヒーロー
男と楽しそうに喋んなや。
お前……俺の事、好きなんやろ?
何で他の男にモテてん?
頭の中でグルグル回る。
萌子にとって俺って何やねん?
彼氏やよな?
何で俺と居る時より楽しそうなん?
その日は一日、モヤモヤしたまんま。
居残りしてる萌子を待ってやる余裕なんてなかった。
「おーい、颯!」
帰る途中、ツレに呼ばれて振り返った。
「んぁ?」
「お前機嫌悪いねー」
態度に出した俺を見て苦笑い。
「あぁ……すまん。
いまからサッカーか?」
「あ、うん。
てか、颯……その機嫌の悪さ、もう聞いたの?」
サッカーボールを足で転がしながら、俺の顔を覗きこんだ。
「聞いたって……?」
「萌ちゃんが、サッカー部の後輩に狙われてるって話」