【短編】ヒーロー
萌子にとって俺は……何なん?
好きと彼氏は違うんか?
日が暮れるのが早くなったからか。
気分が凹んでるからか。
空気の冷たい夜空に溜息が出る。
――ピンポーン……
チャイムを押しても、何の反応もない萌子の家。
あれ?
あいつ、どこ行ってん?
何度か押したチャイムは、空しく響いただけだった。
帰る……か。
そう思った瞬間、後から萌子の声がした。
『え? 颯ちゃん?』
振り返りながら見た萌子は、制服のまま。
「何や、お前……どっか行ってたんか?」
「颯ちゃんこそ、どうしたの?」
少し拗ねた表情で、逆に質問された。