【短編】ヒーロー

涙が溢れ出してるのに……俺を真っ直ぐに見つめる萌子にドキッとした。




「……もしかしてお前、わかってないんか?」



大きく首を縦に振り頷く姿を見て、

『はぁー……さすが萌子』

って、すげー笑顔になった。


俺が悩んだんて何やってん? ってな。



「お前の好きな奴だれ?」

「颯ちゃん」
 


即答され、ちょっと嬉しくなったから

『お前、好きでもない奴とキスとかする?』

なんて言ってみたり。


そしてまた、すぐに大きく首を横に振ってくれる。



どうしても止めれなくて。
どうしてもキスしたくなって。

『じゃあ、そう言う事や……わかったか?』

そっと萌子の柔らかい唇に俺の唇を合わせた。



「え? え? え?
颯ちゃんって……私の事、好きなの!?」

「ぶはっ! お前、キスする時くらい目閉じろやー」



鳩が豆鉄砲を食らったような顔で俺を見つめる。


これ以上、萌子を押し倒してたらヤバイ…な。
笑いながら、萌子の上から離れた俺の腕を掴まれた。



「あ……萌子が積極的や」



急に何やねん?
意外な行動に早くなった俺の心臓。



「ねぇ……颯ちゃん……そうなの?」



潤んだ瞳に、ピンクに染めた顔で俺を必死に見つめながら聞く萌子に、



「だから、そうやって言うてるやろ?」



我慢出来ず……またキスをした。
漏れる吐息に理性を失ってしまう。


俺が絡める舌に必死についてくる萌子。

可愛くて掴まれた腕をキツく握ってるのも無視してしまう。



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