【短編】ヒーロー
萌子の苦しそうな吐息に我に返り、唇を離した。
唇を唾液で照らし、さっきよりも潤んだ瞳をトローンってさして俺を見つめる。
……それは、反則やって!
「萌子……色っぽい顔してたらヤるで?」
「なっ!」
さすがに俺も、これ以上は……。
冗談っぽく言ったけどな?
結構、本気やねんで?
俺の言葉に真っ赤になった。
可愛いなぁ。
でも萌子ペースでゆっくり行かなアカン。
俺の名前を叫ぶから悪戯な笑顔で
『本気にした?』
なんて誤魔化した。
でもやぁ?
「手……繋いでもいい?」
って! どっからやねん。
しかも家ん中やで?
手繋ぐとこから始めるんかよ?
でも……繋いだけどな?
ドキドキしてるんが伝わってきたからか。
萌子やからか。
わかれへんけど、俺も手に神経が集中してまう。
俺もこんなんじゃアカンやん。
萌子の手の体温は、熱いけど心地よくて。
安心出来たんや。