S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
story4 ~一人で~
「俺とした事が…。」

そう呟きながら、俺は職場である遊園地へと急いでいた。

今日は、大学院の教授の研究発表に先駆け、激励会を兼ねたレセプションパーティーだった。
本番は明日。
朝一番の新幹線で茨城へ向かう。
どうやら、その新幹線の切符を遊園地のロッカーに忘れてしまった様だ。

それもこれも、安浦可奈子の所為だ。
あいつが『絶対に惚れません!』なんて言うから…。

着慣れないスーツのネクタイを少し緩める。

「世の中には、絶対なんて無いんだよ。」

誰に向けるでも無い言葉が、夕焼けに消える。

あれは、先日の事。
人手が足りないレストランにヘルプに入った時だった。

経験者とは聞いていたが、いつものびくびくした安浦にはない堂々とした働きっぷりに、俺はヤツを見直していた。
やろうと思えば、出来るヤツなんだ。と。
あの時、バランスを崩した安浦を庇ったのは、自分でも驚いた程咄嗟だった。
そう、『お客様を』と言うより、『安浦を』庇った…。
遊園地で働いている以上、お客様第一を心掛けていたのだが。
ポリシーに反した自分の行動に、納得の行く説明が出来ずにいた。





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