S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
茨城に到着すると、出発前が嘘の様にアイツの事は気にならなかった。
その甲斐あってか、メインイベントの研究発表(と言っても、『教授の』だが)も無事に終わった。

今日は研究発表の場ともなっているこの大学を見学する事になった。
各大学の教授達は、もっと専門的な意見交換をしているのだろう。本当は、俺もそれに参加したい欲求にかられていた。

俺は、本を何冊かピックアップして椅子に静かに座った。

この大学は、立派な図書館がある事で有名だ。
成る程。確かに専門書は、そこいらの大学や市民向けの図書館の比では無い。
教授の研究室でしか見た事の無い古い科学雑誌まである。

本とノートを開き、左手にペンを持つ。
気になる所はコピーすれば良いのだが、自ら書いた方が頭に知識が入る気がして、もうずっとこの様な読書スタイルだ。
パラパラとページをめくりながら、左手のペンをクルクル回す。
コレも昔からの癖。
無意識にやってしまうのだ。

本の中頃まで読み進めた位で、女性の声と気が付いた。

「ミキが話し掛けてよ。」

「ええ~?シオリが話し掛けてよ。」

何やら揉めている様だ。
...視線も感じる。

こんなに立派な図書館で、逆ナンか?何て無粋な。

俺は、努めて集中力を保つ様に、息を小さく吐いた。

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