S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
「あのぉ?」
「すみません。」

始めは控え目過ぎて気付かなかったが、何度も聞こえるその声は、どうやら俺に向けられている様だ。
ゆっくり顔を上げると、女性が二人、俺の目の前に立っていた。

「あの、前田教授の大学の方ですよね?」

二人は探る様に、聞いて来た。

「そうだが?」

ただでさえ、読書を邪魔された上に、いきなりの不躾な質問。
俺は、怪訝な顔で答えた。

それに気が付いたのか、二人は言いかけた次の言葉を躊躇いながら絞り出す様に続けた。

「あの、昨日の研究室発表聞いたんです。凄く興味深くて。」

「そうなんです。それで、医療から娯楽まで、色々あるんだなと思って。」

「レーザー推進の所が、私達、専門分野じゃ無いので、もっと詳しく教えて頂けないかと思って。」

二人で時々顔を見合わせながら、必死に言葉を探す姿...。

...かわいい...。

とは、1ミリも思わなかった。

図書館の雰囲気とのギャップ。
人の読書を中断させる身勝手さ。
しかも、その理由。

「それなら、前田教授自身に聞いた方が理解し易いと思が?」

俺は、怒りにもにた感情をグッと堪え、そうとだけ言うと、読んでいた英文の科学雑誌に目を落とした。

あっ。と微かに言葉を発した後、二人は口をつぐんでしまった様だ。

(クソっ。アイツなら「読書中に話しかけるんじゃねえ!」って言ってスッキリ出来るのに...)

ん?アイツ?

俺は、急に出てきた安浦の姿に自分で驚いてしまった。

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