S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
story 5 ~送別会~
有意義だった茨城出張も終わり、新幹線で帰って来た頃には、もう20時を過ぎていた。

柊が、『女性の口説き方』を熱弁する余り、乗り換える駅を間違ってしまったからだ。

「じゃあ、また学校で。」

駅の改札から出ると、何故かそう晴れやかに言って、柊は手を振りながら雑踏の中に消えて行った。

「あぁ。」

必要以上に疲れた俺は、そう応えると、柊とは反対方向へ歩き出した。

今日は、19時から夏川さんの送別会だ。
本当は、一度マンションに帰るつもりだったが、それも無理そうだ。
駅から車で15分。
歩いて行くには少し遠い。
しかも俺は、小さなキャリーケースを従えている。

「タクシーかな。」

疲れているし、会が始まって1時間。余りアルコールが入った状態の上司達を相手にしたくない。
『送別会そのものに行かない』と言う手もあるのだが、夏川さんにはお世話になったし、内田さんに『遅れるが出席する』と言ってしまった手前、そういう訳にもいかない。
…アイツの事も気になるし…。

「…って、何でだよ。」

俺は、思わず自分で自分にツッコミをいれた。
別に、安浦の事は何とも思っていない。
心の中でそう繰り返し言い聞かせた。

「何が『何で』なの?」

ポンと肩を叩かれ、グッと息が止まる。
反射的に声の方を振り向いた。

「慎ちゃん、久しぶり。」

声の主は、すみれさんだった。
ニコニコと、柔らかい笑顔を浮かべている。

「すみれさん、驚かさないで下さいよ。」

俺は、はぁと小さく息を吐くいた。

「驚いたなら、もうチョット大きな反応しなさいよ。」

すみれさんは、ワザと怒った様な顔をして見せた。

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